定期券の話題をもうひとつ

数日前に東北線越河駅の通勤定期券を題材にとりあげましたが、今回は丸森線(現・阿武隈急行電鉄線)の通学定期券所持者と捺されたハンコについて私的考察を試みます。

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昭和55年、西暦1980年。

ポーランドで社会主義国初の独立自主管理労組・連帯が結成されて、その十年後に起きるベルリンの壁崩壊に向かって歴史が音を立てて大きく動き出した年でした。一方、同年5月5日、仙台駅東口では05555番の入場券を巡って『売れ、売らない』で出札掛とまつしまが押し問答していました。

この一事を以てしても、まつしまの来し方がどんだけ下らなかったか、ということをサクッとご理解いただけると思います。改めて情けないです、はい…。

さて、この定期券。大学生・短大生・専門学校(専修学校と各種学校)生に対して発行される券種ですが、持ち主は専門学校生じゃなかろうか、と想像しております。

だって、大学生は3月に学校になんか行きません。試験はとっくに済んだし、学校行ったってそもそも教授が出てきません。もちろん講義も演習もない。部活動や研究会なんてのもないとはいえないけど、体育会系は合宿所でしょうし、文化部はそんな熱心に活動してたかどうか(笑)。そんじゃ、バイトに通っていたのかな、なんてことも考えてみましたけど、

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80年9月号の丸森線時刻表です。

丸森まで帰る下り最終は仙台17:48発、これを外したら槻木から先に行く交通機関がありません。工場とか建設工事の現場なら判りますが、販売とかサービス・飲食といった業種は『さぁ、これから忙しくなるぞ!』ってタイミングです。そんな時間に『お先しまーす、お疲れさまっしたー!』なんて帰れるワケありませんわな…。だいたいそんなバイト、最初っから雇ってもらえないでしょう。

理学部とか工学部とか農学部医学部みたいに実習室や研究室に通わなきゃならない学部の学生も、17:48発なんてまず無理でしょうし、息を切らして駆け込むくらいなら、むしろ研究室に泊まり込んじゃったんじゃないでしょうか。実際、研究室に泊まりっぱなしで全然下宿に帰ってこない工学部の学生が何人もいましたから。(そういや、たまにあいつらが帰ってくると風呂がいっぺんに汚れたって云ってなぁ…。)

というワケで、大学生にはどうにも使いにくそうですが、一方、この定期券の持ち主は23歳の男子。当時の仙台には男子が入学できる短大ってありませんでしたから、ってことは消去法で専門学校生…?

でも、どんな種類の学校だったんだろう…?

看護? 理容美容? 簿記会計? 医療事務? 調理師? 栄養士? 自動車整備士?

ってか、いまはどうなのか判りませんが80年代初頭の仙台に学校教育法の設置基準に適合した各種学校や専修学校って、そんなにたくさんあったっけ??

(ちなみに、学校教育法が適用される範囲の学校でないと、通学定期券の発行を受けられません。その場合は、学生であっても勤労者と同じ通勤定期を買わなきゃなりません。具体例を示すと、進学塾に通う子は通勤定期券で乗り降りしています。)

と、想像はどんどん膨らむんですが、このへんでいったん切り上げて、もう一枚。

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またまた妙なのが出てきました。ふつう、どの路線を利用するかは【経由】の欄に駅名を記入して指定するものです。丸森駅発行の券には槻木経由と印刷してあるでしょ?

然るにこの券、『丸森線用』というゴム印が捺されています。半世紀にわたって乗車券を蒐集していますが、こんな表記に出くわしたのは初めてです。

これまた、上に掲出した時刻表との関係であれこれ考えちゃうキーワードです。

そこで、同じ時刻表から当時の路線図を引っ張ってまいりました。まつしまがなにをどう私的考察したのか、ご参考までにご覧ください。

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東北線から角田・丸森方面へ向かうには、丸森線のほかに国鉄バスの路線がいくつかあったことが判ります。(蛇足ながら、それらは全滅しました。現在運行されている路線はひとつも残っていません。)

で、そんじゃそれらの路線はどんなカンジで走っていたのかとゆーと、

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これが、意外と本数があったんですね、勿論、一日5往復しか走らない丸森線との比較に於いて、という意味ですけど。

仙台から直行する便だけでなく、白石駅とか船岡駅からの路線もありました。仮に仙台17:48の丸森行最終列車を逃したとしても、19:37発の白石行に間に合えば、船岡20:34着、国鉄バスは列車からの接続は必ず待ちますから、20:37発の磐城角田行に乗り継ぐことができます。

バスは船岡の市街地を抜けると、あとは角田へ向かって国道349号線沿いの集落を通りますので、岡駅前に停留所はなかったでしょうけど、駅からそう離れていないところにポールが立っていた筈です。

となると、国鉄バスをそのように利用する乗客も当然いたことでしょう。

で、車掌だか運転士と、同じ国鉄なんだからこの定期で乗せろとか、いやそれはできない、バスの運賃は別立てなんだから払えとか、揉めたことがあったんじゃないのかな、なんて、またまた想像をたくましくしちゃうワケです。

そんなゴタゴタがあって、んでもまさか【この定期券の値段がこんだけ安いのは丸森線専用だからなんだぞ!これではバスには乗せねえんだからな、勘違いすんなよ!】とは書けなかったでしょうから、揉めたときのために【鉄道専用】を意味するハンコを捺したんだろーなー、と…。

実際、バスの運賃はかなり割高ですもんね(笑)。

まぁ、うえに書き散らしたのはすべてまつしまの想像で、実際にそんなことがあったかどうかは既に歴史のかなたへ流れ去って今となっては確かめようがありませんが、んでは、バス路線がなくなっちゃった現在の姿はどういうことになってるんでしょう。

最後に、丸森線を継承した阿武隈急行電鉄の最新時刻表を眺めてオシマイにしようと思います。

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ありゃまぁ!これはびっくり!!

列車は25本、なんと丸森線当時の5倍、しかも最終が槻木23:25発!これなら理学部でも工学部でも、わざわざ下宿したり、あるいは研究室に寝泊まりしないでもちゃんと自分ちから通えそうですね(笑)。

昨今は国公立だって授業料は決して安くありませんから、そのうえさらに下宿代なんて云ったら、かじりにかじられた親御さんのスネは遂には消えてなくなって、気の毒に、終いには歩けなくなっちゃうかもしれません。

スネをかじるばかりが能じゃない、おやじさんおふくろさんが死ぬまで自分の足で立って歩けるように、自宅から通学するのが親孝行ってもんですぞ、学生諸君!(笑)。

まぁ、下宿住まいも研究室泊りも「学問のためだ!」なんて、そんなこと誰も本気で信じちゃいませんしね…(大爆笑)


*** 追記 ***

本文前段、【定期券の所持者は専門学校生…】のくだりは、当時仙台にあった専門学校の状況と、学校教育法第1条、旅客営業規則第36条、同第40条第1項第1号、及び【指定学校】という語の正確な定義とを総合的に勘案すると、おそらく誤りであろうと思われます。

少なくとも学校教育法第134条(各種学校)の学生は通学定期券発行対象外であることが判りました。ただ、同第124条(専修学校)は、その学生が所属する課程によっては同第1条の規定に該当するので、そのケースは旅客営業規則のいう【指定学校】の定義に照らし合わせない限り該非が判定できないことも判りました。

また、本文中に記した専門技能や国家資格等についても、同第124条に包含されるものと同第134条が規定するものとがゴッチャになっていることを認識しました。

追記なのに却って判りにくい記述を加えることになってしまいましたが、それぞれがなにをどう規定しているのかについて説明を始めたら、いつ終わるか判らなくなっちゃいそうです。よって(おそらくいらっしゃらないとは思いますけど)関心をお持ちになった方は、どうかご自身でお調べになってみてください。その方が、シドロモドロで要領を得ないまつしまの説明よりよっぽどよく判ると思いますので…。

以上、ナイショさんからコメントを頂戴して調べ直したことを追記しました。

*** 追記、終わり ***



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コメント

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急行まつしま2号

Re: 23/10/20 02:11 のナイショさま
コメントとご指摘、ありがとうございました。誤謬をご指摘いただいているため、(本文の記述の加除訂正を含めて)それでいいのかどうか悩みましたが、御意思を尊重して記述内用の開示は見合わせます。学校教育法第1条、旅客営業規則第36条、同第40条第1項第1号、及び【指定学校】の解釈と理解が不十分でした。

仙南地区の国鉄バス路線の切符は、乗車券と特殊回数券の一部くらいしか蒐集できませんでした。定期券の様式は(定期回数券以外は)鉄道区間と同じだろうと思いますが、ワタシも自分で書いていて、(そんじゃ、バスの定期で丸森線に乘ろうとするのもいなかったとは云い切れないよなぁ…)なんて、逆のケースにも防護措置を講じたのかどうかを考えてしまいました。いまとなっては調べようがありませんが…。ひょっとすると笹山線と国鉄バス園笹線の間にも同じようなゴム印があった可能性が考えらそうですね。

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急行まつしま2号

Re: 23/10/20 14:45のナイショさん
コメントありがとうございます。お気遣いいただき却って恐縮です。自分で書きながら、「看護学校の子は全寮制だったから判んねえなぁ、歯科技工士学校の子は定期券なに色だったっけ?」なんて、甚だ曖昧な記憶を辿ったんですが、改めて勉強しなおす契機になりました。ありがとうございました。

今回頂いたコメントと呼応するかのように、滋賀県首長会議のフリースクールのハナシが取り沙汰されています。市町村(行政側)の多くが【学校に来ない側に問題あり】という意識から一歩も踏み出そうとしていないことがはっきりと示されていて、(なるほど、さもありなん)と感じました。

なんて、柄にもない世評など失笑をかうだけですので、もうやめます。

SDGsだの多様性だの喧しいですが、ふと気付けば、人の痛みを全く考えない思いやりゼロの世の中になり果てていますね。どのお題目も商業臭ふんぷん、都バスの乗車拒否、車椅子を押しのけるエレベーター利用者、滋賀県首長会議の発言等々の現実の前では、【共棲】の訴えが実にそらぞらしく聞こえるのも当然では、と感じております。
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急行まつしま2号

2019/8/12 に Yahoo blog から移ってきました。2008/3/28 から活動しています。

残念写真はFH君(高校時代の同級生)の叔父さん(故人)が1960~62年にかけて撮影したもので、まつしま(以下、管理人という)は約40年前、高校卒業時にそのベタ焼きスクラップ帳をFH君から預かりました。

約半世紀が過ぎ、管理人にも終活準備の必要が迫ってきましたが、どの被写体もこのまま埋もれさるのはあまりにも惜しいと考えて公開を決意しました。

全ての記述と残念写真を除く全ての画像は、管理人によるものとお考え下さい。従って、残念写真に対する苦情・異議等は、いっさいお受け致しかねます。この点、あらかじめご了承頂くとともに、不同意の方の閲覧は(たとえ記事が全公開に設定されている場合であっても)お断り致します。

また、残念写真以外の全てについては、管理人の責任と権限で対応致しますが、管理人が【適切でない、相応しくない、好ましくない、不快である】等と判断した書き込みは、発見し次第、全て管理人の一存で警告なしに即刻削除します。この点も併せてご了解頂きます。

なお、上記の点は、全て【管理人の固い意思】であって【どなたからどのような種類の申し入れ等があっても応じない】こと、及び【どなたとの議論にも応じない】ことを、あらかじめ明記しておきます。

これらの方針に同意されない方の閲覧は当方から固くお断り致しますので、どうぞ速やかにご退出ください。

記事を閲覧される方は、(万が一紛議等が生じた場合も含めて)全てここに記述した方針に同意され応諾された方として対処致しますので、念のため此処に併せて明記しておきます。

原則的に【来る者は拒まず】が基本スタンスですが、ただし、管理者に対して過去に敵対的言辞等を執った事実のある者からの再接触等は、たといそれが当該敵対的行動の撤回及び謝罪並びに釈明等であっても、その全てを拒絶します。

もし釈明や和解の必要を感じたなら、その時点で直ちにそう処置した筈であり、またそう処置すべきでもありました。それをしないまま再接触を図るということは、

①なんらかの意図があって、非敵対的な態度を偽装もしくは隠蔽している

②記憶力に欠陥のある攻撃的性格

上記①または②のいずれかと考えざるを得ません。すなわち将来に於いて再び敵対的言辞を吐き散らし敵対的行動を執る危険性が極めて大きい者である可能性を窺わせる者である、と見做し得るわけで、そういう面倒くさいヤツと関わり合うのは金輪際願い下げ、二度と御免蒙ります。

そんなヤツに愛想笑いなどする気は全くありません。見つけたら直ちに叩き出して塩を撒くので、そのつもりで。

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